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ストレスチェック実施規程の作り方と記載例|厚労省の規程例をもとに企業担当者向けに解説

|人事・労務

この記事のポイント

  • ストレスチェック実施規程は衛生委員会の審議を経て作成する社内ルール文書
  • 規程に盛り込みたい主な事項は実施体制・調査票の種類・高ストレス者基準・秘密保持など
  • 厚生労働省の「実施規程(例)」をベースに自社に合わせてカスタマイズできる
  • 2028年4月義務化(50人未満)に向けて今から整備しておくことを推奨

ストレスチェック実施規程とは何か

ストレスチェック実施規程とは、事業場がストレスチェック制度を適切に運用するために定める社内ルール文書です。労働安全衛生法に基づく指針では、事業者は衛生委員会等の調査審議を踏まえて、実施規程を策定するよう求められています。

規程を定めることで、担当者が変わっても制度を継続的・一貫して運営でき、従業員への説明責任も果たせます。規程がない事業場では、実施のたびに手順の確認や担当者間の認識合わせが必要になり、運営コストが高くなります。

実施規程は「作って終わり」ではなく、毎年の衛生委員会で内容を見直す習慣をつけることが重要です。義務化が50人未満にも拡大される2028年4月に向けて、今から整備しておく価値があります。

実施規程に盛り込みたい主な事項

厚生労働省の「ストレスチェック制度実施規程(例)」をもとに、実施規程に記載すべき主な事項を整理します。これらを漏れなく規程に盛り込むことで、労基署の指導を受けた際にも対応できる体制が整います。

項目主な内容
1. 実施体制実施者(医師・保健師等)と実施事務従事者の役割、外部委託先の選定基準
2. 実施方法調査票の種類(57項目版・80項目版など)、実施時期・頻度、回答方法(紙・Web)
3. 高ストレス者の選定基準素点換算法または合計点数法のどちらを採用するか、上位何%を高ストレスと判定するか
4. 結果の通知方法実施者から本人への結果通知の方法(遅滞なく通知する)
5. 面接指導の申出・実施方法高ストレス者が申し出る窓口、面接の実施期限、医師への情報提供の範囲
6. 情報の保存方法と期間個人の検査結果は5年間保存が推奨(実施者または実施事務従事者が保管)。集団分析結果も5年間保存が推奨(努力義務)
7. 不利益取扱いの防止検査結果・面接申出を理由とした解雇・降格・不当な人事異動を行わないことの明記
8. 秘密保持の方法実施事務従事者の守秘義務、人事権者が実施事務に関与できない旨の規定

調査票の種類は57項目版が標準です。質問内容の詳細な内訳や80項目版との違いを踏まえて選定したい場合は、ストレスチェック57項目の質問とは?職業性ストレス簡易調査票の選び方ガイドで解説しています。

衛生委員会での審議が必須

実施規程を策定・変更する前には、必ず衛生委員会(または安全衛生委員会)で審議を行う必要があります。衛生委員会は毎月1回以上開催し、議事録を3年間保存する義務があります。

ストレスチェックに関して衛生委員会が審議すべき主な事項は以下のとおりです。

  • 実施者の選任方法と外部委託先の選定
  • 使用する調査票の種類
  • 高ストレス者の選定基準
  • 結果の集団分析の実施方法と活用方針
  • 従業員への制度の周知方法
  • 面接指導の申し出窓口と対応手順

審議結果は議事録に残し、3年間保存してください。議事録に記載すべき事項や運営手順の詳細は、ストレスチェックにおける衛生委員会の役割と議事録の作り方で解説しています。実施規程の内容に変更があった場合は、変更のたびに衛生委員会での審議・承認を経ることが求められます。

実施規程の記載例(主要部分)

以下は、厚生労働省の規程例を参考にした主要条文の記載例です。実際の作成時は自社の実施体制・委託先・使用する調査票に合わせて調整してください。

第○条(目的)

本規程は、労働安全衛生法第66条の10の規定に基づき、●●株式会社においてストレスチェック制度を適正かつ継続的に実施するために必要な事項を定めることを目的とする。

第○条(実施体制)

ストレスチェックの実施者は、産業医(または保健師)とする。実施事務従事者は人事部員のうち対象者の人事に関して直接権限を持つ者を除いた者が担当し、実施者の指示のもとで業務を行う。

第○条(使用する調査票)

調査票は、厚生労働省が示す職業性ストレス簡易調査票(57項目)を標準として使用する。

第○条(高ストレス者の選定)

高ストレス者の選定は、厚生労働省の素点換算表に基づき、ストレス反応に関する領域で一定の基準点を超えた者、または各領域の合計点が一定基準を超えた者とする。具体的な基準は実施者が定め、衛生委員会の承認を得る。

第○条(秘密保持)

実施者および実施事務従事者は、検査の実施に関して知り得た情報を正当な理由なく第三者に漏らしてはならない。また、会社は検査の結果を対象者本人の同意なく事業者に提供させてはならない。

実施規程の作成・更新フロー

実施規程は「作成→審議→運用→見直し」のサイクルで管理します。

  1. 初回作成:厚生労働省の規程例をベースに自社の実施体制・調査票・高ストレス判定基準を記載
  2. 衛生委員会での審議・承認:改訂内容を委員会で審議し、議事録に記録
  3. 従業員への周知:全従業員に実施規程の概要と実施目的を説明(社内イントラ・説明会など)
  4. 年次見直し:年1回以上、法令改正・実施結果・委員会意見を踏まえて改訂を検討

実施規程の整備と並行して、年間の実施スケジュールをまとめた実施計画も作成しておくと、衛生委員会での審議がスムーズになります。具体的な作成手順はストレスチェック実施計画書の作り方で解説しています。

50人未満の事業場では2028年4月義務化に向けて今から準備を

2025年5月14日に公布された改正労働安全衛生法により、ストレスチェックは2028年4月1日に50人未満の事業場にも義務化されます(施行日は政令で確定)。

現状では努力義務ですが、義務化後は実施規程の整備も求められます。今から体制を整えておくことで、義務化時点でスムーズに移行できます。厚生労働省は2026年2月25日に「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月版)」を公表しており、規程作成の参考として活用できます。

よくある質問

ストレスチェック実施規程は必ず作成しなければなりませんか?

法律の条文に作成義務はありませんが、厚生労働省の指針は、規程を定めてあらかじめ労働者に周知するよう求めています。実施規程を定めることで実施体制・高ストレス者基準・秘密保持方針が明確になり、労働者への説明責任を果たせます。衛生委員会がある事業場(50人以上)では、規程案を衛生委員会で審議するプロセスが求められます。

実施規程は衛生委員会がない50人未満の事業場でも必要ですか?

50人未満の事業場には衛生委員会の設置義務はありませんが、実施規程の作成は推奨されます。2028年4月1日施行(令和7年法律第33号。施行日は政令で確定)で義務化対象が拡大された際に備え、今から規程のひな型を準備しておくことで義務化後のスムーズな移行につながります。

調査票の種類は57項目以外でも規程に記載できますか?

はい。厚生労働省は57項目版(職業性ストレス簡易調査票)を標準として推奨していますが、規程に明記することを条件に他の調査票も使用できます。独自の調査票を使用する場合は、3領域(心理的な負担の原因・心理的な負担による心身の自覚症状・他の労働者による支援。労働安全衛生規則第52条の9)を含むことが求められます。

高ストレス者の選定基準は何を使えばよいですか?

厚生労働省のマニュアルでは、①各領域の合計点数を使う方法(合計点数法)と、②素点換算表による評価点を使う方法の2つが示されています。規程には「どの方法を採用するか」を明記します。なお、マニュアルの評価基準例は、おおむね10%程度が高ストレス者となることを想定した設計です。

実施規程に人事権者を実施事務従事者から除外する規定は必要ですか?

必要です。労働安全衛生規則第52条の10第2項により、解雇・昇進・異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、ストレスチェックの実施の事務に従事できません。この規定を実施規程に明記することで、個人情報漏えいリスクを防止し、労働者が安心して受検できる体制を担保できます。

実施規程は毎年更新が必要ですか?

法令上、毎年の更新義務はありません。ただし、法改正(2028年義務化拡大等)・外部委託先の変更・調査票の変更・高ストレス者基準の見直しなど、規程に記載した事項が変わった場合は速やかに改定が必要です。衛生委員会がある事業場では、改定内容を衛生委員会に審議・報告するプロセスを踏みます。

厚生労働省の「実施規程(例)」はどこで入手できますか?

厚生労働省のホームページ「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策に関するページ」からダウンロードできます。「ストレスチェック制度実施規程(例)」として公開されており、規程のひな型として活用できます。令和8年2月改定版(小規模事業場向けマニュアルに収録)も参照してください。

外部機関に実施を委託する場合、実施規程の内容は変わりますか?

変わります。外部委託の場合は、実施規程に「委託先機関名・委託範囲・個人情報の取扱い方針・守秘義務の担保方法」を追記します。特に委託先がストレスチェック結果を保管する場合、データの管理場所・アクセス権者・契約終了時のデータ返還・廃棄方法を明記することが重要です(要配慮個人情報に該当するため)。

実施規程で定めた実施時期を変更する場合、どのような手続きが必要ですか?

実施時期を変更する場合、衛生委員会で審議した上で規程を改定します。労働安全衛生規則第52条の9では「1年以内ごとに1回、定期に実施」と規定されており、前回実施から1年を超えてはなりません。繁忙期の回避・定期健診との同時実施・新年度移行など合理的な理由があれば変更は認められますが、労働者への事前周知が必要です。

実施規程に守秘義務違反の罰則を記載すべきですか?

規程への記載は法令上義務ではありませんが、記載することで実施事務従事者への注意喚起になります。実施事務従事者には労働安全衛生法第105条の守秘義務があり、違反した場合は同法第119条により6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。実施規程に「実施事務従事者は法105条に基づく守秘義務を負う」旨を明記するのが実務上の推奨です。

50人以上の事業場でストレスチェック実施規程を衛生委員会で審議する具体的な手順は?

①衛生委員会に実施規程案を提出し議題として設定、②労使の代表が参加する衛生委員会で規程案の内容(実施体制・調査票・高ストレス者基準・秘密保持等)を審議、③委員会で合意を得た後に正式な実施規程として確定、④決定内容を全労働者に周知(イントラネット・書面等)、⑤審議議事録を作成・保管(3年間)。衛生委員会は月1回以上の開催が義務です。