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ストレスチェック実施計画書の作り方|自社運用のための年間スケジュールとテンプレート

|労務管理

この記事でわかること
  • ストレスチェック実施計画書の記載例(7項目)と、指針が求める審議事項
  • 年間スケジュールの標準モデル(10月実施・12月報告の場合)
  • 役割分担(実施者・実施事務従事者・衛生委員会)の決め方
  • 通知文書・同意書・記録様式の準備チェックリスト
  • 自社システムで運用する場合の追加設計項目

ストレスチェック実施計画書とは

ストレスチェック実施計画書とは、毎年のストレスチェックを実施するにあたり、「誰が・いつ・どのように実施するか」を事前に定めた社内文書です。法令上の提出義務はありませんが、衛生委員会での審議事項(労働安全衛生規則第22条第10号・ストレスチェック指針)であり、実施前に内容を決定・記録しておくことが求められます。

計画書を事前に作成しておくことで、次のようなメリットがあります。

  • 担当者が変わっても毎年同じ品質で実施できる
  • 衛生委員会・経営陣への説明が容易になる
  • 労基署調査の際に対応の証拠として使える
  • 実施後の振り返り・改善が体系的にできる

実施計画書の記載例(7項目)

本記事では、計画書の記載例として次の7項目を挙げます。なお、厚生労働省の指針(心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針)が衛生委員会で審議すべきとしている事項はこれより広く、情報の取扱い・結果の記録の保存方法・結果の利用目的・開示や訂正の方法・苦情処理・受検しない選択ができること・不利益取扱いの防止なども含まれます。これらもあわせて審議・記録してください。

記載事項記載内容の例
1. 実施時期毎年10月1日〜31日(回答期間)
2. 実施方法Webシステム(自社開発)による電子的実施
3. 実施者産業医 ○○ ○○(医師)+保健師 △△ △△
4. 実施事務従事者人事部 健康管理担当 ○名
5. 使用する調査票職業性ストレス簡易調査票(57項目)
6. 高ストレス者の判定基準厚生労働省のマニュアルの評価基準(素点換算表を使う方法)
7. 集団分析の実施方法事業場・部署別に10名以上のグループで分析

これら7項目を衛生委員会で審議・承認を得た上で、実施計画書として記録します。

自社運用をはじめると「何を計画書に書けばいいかわからない」と迷うことがあります。まず上の7項目を埋めることを最優先にしてください。完璧な書式よりも、内容の正確さと衛生委員会での承認プロセスを踏むことが重要です。

年間スケジュールの標準モデル

ストレスチェックの実施から労基署への報告書提出まで、年間で約5〜6ヶ月の準備・対応期間が必要です。以下は「10月実施・12月報告」を想定した標準スケジュールです。

時期実施事項担当
7〜8月衛生委員会での実施計画書の審議・承認衛生委員会・産業医
8月実施者・実施事務従事者の確定人事部
8〜9月調査票・システムの準備・テストIT担当・人事部
9月末従業員への事前通知(目的・方法・守秘義務)人事部
10月1〜31日ストレスチェック実施(回答期間)実施者・実施事務従事者
11月上旬高ストレス者への面接指導案内(勧奨)実施者(産業医・保健師)
11月中旬集団分析の実施・分析結果の作成実施者
11月下旬集団分析結果を衛生委員会で報告衛生委員会
12月末労基署への報告書(様式第6号の3)提出人事部
翌1月〜3月集団分析をもとにした職場改善計画の策定衛生委員会・各部署

実施月が異なる場合も、労基署への報告は1年以内ごとに1回、定期に行います。毎年同じ時期に出すと決めておき、そこから逆算してスケジュールを組んでください。

役割分担の決め方

ストレスチェックには3つの主要な役割があり、それぞれ法令で要件が定められています。

実施者(資格要件あり)

結果の評価・高ストレス者の判定を行う役割です。以下の資格を持つ者が担当できます。

  • 医師(産業医を含む)
  • 保健師
  • 歯科医師(研修修了者)
  • 看護師(研修修了者)
  • 精神保健福祉士(研修修了者)
  • 公認心理師(研修修了者)

自社に産業医がいる場合は産業医が実施者になるケースが多いですが、産業医は面接指導も担当する場合が多く、負担が集中しがちです。保健師や外部の精神保健福祉士を実施者に加えることで、産業医の負担を分散できます。

実施事務従事者(資格要件なし)

調査票の配布・回収、結果の入力・保管などの事務作業を担当します。人事部・総務部のスタッフが担当するケースが一般的ですが、「結果を見ることができる立場」になるため、情報管理の意識が重要です。

衛生委員会の関与

実施計画の審議・承認と、集団分析結果のフィードバックの場として衛生委員会が関与します。50人以上の事業場では毎月の衛生委員会開催が義務のため、7〜8月の委員会でストレスチェックの実施計画を議題にすることが定番です。衛生委員会で何を審議し、議事録にどう残すべきかはストレスチェックにおける衛生委員会の役割と議事録の作り方|実施前の審議事項と運営手順で具体的な審議事項と運営手順を解説しています。

準備チェックリスト

実施前に揃えておくべき書類・システムのチェックリストです。

書類・文書

  • 実施計画書(衛生委員会承認済み)
  • 従業員への事前通知文(実施目的・守秘義務・利用制限の説明)
  • 同意書の様式(結果を事業者に提供することへの同意。結果通知後に取得するもので、実施前・実施時には取らない)
  • 記録保存様式(実施者・実施事務従事者の名簿、実施日時の記録)
  • 高ストレス者への通知文書(面接指導の勧奨)
  • 報告書様式(様式第6号の3:労基署提出用)

システム・ツール

  • 調査票の配信・回答収集機能
  • 高ストレス者の判定ロジック(合計点数を使う方法または素点換算表を使う方法)
  • 個人結果の通知機能(本人への通知は義務)
  • 集団分析レポートの出力機能
  • 結果の5年間保管機能(電子的保管も可)

自社システムで運用する場合の追加設計項目

外部SaaSに頼らず自社システムでストレスチェックを運用する場合、計画書の内容に加えて以下の設計が必要です。

設計項目内容
アクセス制御実施者・実施事務従事者のみが結果データにアクセスできる権限設定
結果の暗号化個人のストレス結果は暗号化して保管(個人情報保護法対応)
バックアップ5年間の保管義務に対応できるバックアップ・復元設計
法改正対応フロー調査票の改訂や判定基準変更に対応できる設計(設問・スコアの更新)
CSVエクスポート集団分析データ・報告書データをCSVで出力できる機能

自社システム開発のメリットは、このような「自社の運用フローに完全に合わせた設計」ができる点です。

自社システムを構築する際に最も重要なのが「役割ベースのアクセス制御」設計です。実施事務従事者は結果データを入力・管理できるが、上司や人事の採用担当はアクセスできないという設計が法令遵守の要です。開発会社に依頼する際は、このアクセス制御要件を仕様書に必ず明記してください。

よくあるミスと対策

初めて自社運用をはじめる企業が陥りがちなミスと、その対策を整理します。

よくあるミス対策
衛生委員会の審議を省略して実施7〜8月の委員会で必ず議題にする。議事録に承認の記録を残す
本人への結果通知が遅い回答締め切りから2週間以内に通知できるシステム設計にする
高ストレス者への勧奨を記録していない勧奨を行った日時・方法・本人の反応を記録様式に残す
集団分析の対象が10人未満のグループ10人未満のグループは集団分析対象外(個人特定防止のため)
労基署への報告を忘れる報告は1年以内ごとに1回、定期に行う。毎年同じ時期に出すと決めてカレンダーにリマインダーを設定する

まとめ

ストレスチェック実施計画書は、自社運用を年間通じて安定して回すための「設計図」です。7項目の記載例と指針が求める審議事項を衛生委員会で審議・承認し、年間スケジュールに落とし込むことで、担当者交代や法改正があっても対応できる体制が整います。

今すぐできるアクション:

  • 7〜8月の衛生委員会の議事録に「ストレスチェック実施計画の審議」を追加する
  • 実施者(産業医・保健師)と実施日程を確定する
  • 本記事のチェックリストを印刷して準備状況を確認する

よくある質問

ストレスチェックの実施計画書は法令で義務付けられていますか?

提出義務はありませんが、厚生労働省の指針(ストレスチェック指針)において、事業者は衛生委員会等でストレスチェックの実施方法・実施状況等について調査審議を行わせることが必要とされています。毎年、実施前に衛生委員会で計画内容を審議・承認し、議事録に記録しておくことが求められます。計画書の作成・保管は労基署調査の際の証拠にもなるため、実務上は必須と考えてください。

実施計画書はどのくらい前から準備すればよいですか?

実施の2〜3ヶ月前が目安です。たとえば10月実施の場合は7〜8月の衛生委員会で計画を審議します。準備が遅れると、従業員への事前通知・システムの動作確認・実施者の確保が間に合わなくなるため、余裕を持ったスケジュールを組んでください。

調査票は57項目でなければなりませんか?

指針では「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」の使用が推奨されていますが、必須ではありません。厚生労働省が定める基準(仕事のストレス要因・心身のストレス反応・周囲のサポートの3領域を含む)を満たす調査票であれば使用できます。独自の調査票は、3領域を含み、実施者の意見と衛生委員会の審議を踏まえて事業者が決めます。

実施計画書の書式・ひな形はありますか?

厚生労働省からは特定の書式は指定されていません。衛生委員会の議事録に実施計画の審議内容を記録する形でも問題ありません。独立した計画書を作成する場合は、実施時期・方法・実施者氏名・使用調査票・高ストレス判定基準・集団分析方法・情報管理体制に加え、指針が衛生委員会で審議すべきとしている事項(結果の記録の保存方法・結果の利用目的・開示や訂正の方法・苦情処理・受検しない選択ができること・不利益取扱いの防止など)も記録しておきます。

前年の実施計画書をそのまま流用できますか?

担当者・産業医・実施時期が変わらなければ流用可能ですが、毎年衛生委員会で審議する必要があります。特に2025年5月14日公布の労安衛法改正(50人未満への義務化は2028年4月1日施行)に対応した内容の見直しが必要です。対象者の範囲や体制について計画書の確認を行ってください。

実施者と実施事務従事者が同一人物でも問題ありませんか?

兼任は可能ですが推奨されません。実施者は結果の評価・判定を行い、実施事務従事者は事務作業を行うという役割分担が、情報管理の観点から重要です。特に「高ストレス者の判定結果」は実施者のみがアクセスできる設計にすることで、事業者(会社)への情報漏えいを防ぐ体制が整います。

自社システムで実施計画書を管理するにはどうすればよいですか?

ストレスチェック管理システムに計画書管理機能(実施予定日・担当者・承認状況の記録)を持たせることが理想です。システム開発の際に「毎年の計画書作成フロー」を組み込むと、担当者交代時の引き継ぎが容易になります。最低限、共有ドライブやグループウェアで計画書ファイルを年度別に管理し、衛生委員会の議事録と紐付けて保管してください。

実施計画書の保存期間はどのくらいですか?

法令上の明示的な規定はありませんが、ストレスチェックの結果記録と同様に5年間の保存が推奨されます。特に高ストレス者への勧奨記録・集団分析結果と合わせて保管しておくことで、労基署調査や訴訟リスクへの備えになります。