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ストレスチェックの委託先を変えるとき、過去の結果はどうなるか|保存・引き継ぎ・経年比較

|労務管理

この記事の結論

ストレスチェックの委託先を変えても、過去の結果は失われません。厚生労働省のQ&Aでは、各委託先が自分の実施した分を保存する形と、事業者の指示で新しい保存担当者へ引き継ぐ形のどちらも認められ、引き継ぎに本人の同意は要りません。決めておくべきは「誰が5年間持つか」と「経年比較をどうつなぐか」です。

委託先を変えたら、過去の結果はどこに残るのか

委託先を変えた場合、過去のストレスチェック結果は、原則としてそれぞれの年に実施した委託先が保存します。厚生労働省「ストレスチェック制度関係Q&A」(令和3年2月22日更新)のQ10-1は、外部機関の委託先が変われば、それぞれの外部機関が実施した分の結果をそれぞれの機関で保存することになると答えています。

同じQ10-1は、外部に委託していても、事業場の産業医が共同実施者になっていればその産業医が保存できるとしています。衛生管理者などの実施事務従事者に保存させ、毎年の結果を事業場でまとめて持つこともできます。

結果は「誰が持つか」で保存のルールが違う

ストレスチェックの個人結果は、本人が事業者への提供に同意したかどうかで、保存する人と保存の強さが変わります。厚生労働省「ストレスチェック制度実施マニュアル」の整理は次のとおりです。

結果の種類保存する人期間
本人が同意し、事業者に提供された結果事業者5年間(義務。規則第52条の13第2項)
本人が同意せず、実施者が持つ結果実施者または事業者が指名した実施事務従事者5年間が望ましい(指針)
事業者への提供に係る同意の書面・記録事業者5年間保存するよう求められている(マニュアル)

同意のない結果について、事業者自身には保存の義務はありません。その代わり、規則第52条の11により、実施者側の記録の保存が適切に行われるよう、保存場所の指定や保存期間の設定などの措置を講じる義務があります。委託先を変えるときに気にすべきなのは、主にこの「同意のない結果」です。

前の委託先から新しい委託先へ、結果を移してよいのか

移すことはできます。ストレスチェック制度関係Q&AのQ10-2は、保存を担当する者が変わる場合、過去の結果を引き継ぐことは可能だと答えています。事業者には保存が適切に続くよう措置を講じる義務があり、そこには保存担当者の変更に伴う結果の引き継ぎも含まれるという理由です。

本人の同意は要らない

事業者の指示に基づいて、前の保存担当者が新しい保存担当者に過去の結果を渡すことには、本人の同意は要りません。Q10-2は、この提供が規則第52条の11で義務付けられた行為を遂行するために必要な行為であり、個人情報保護法の第三者提供の制限の適用を受けず、労働安全衛生法第105条(秘密の保持)にも抵触しないとしています。

ただし、引き継ぎ先はあくまで新しい保存担当者(実施者や実施事務従事者)です。人事担当者が結果を受け取ってよいという意味ではありません。同意のない個人結果を、事業者が見られる場所を経由して受け渡すことは避けてください。

2つのやり方の違い

やり方良い点気をつける点
各委託先がそれぞれ保存するデータを動かさないので、受け渡しの手間と漏えいの機会が少ない5年のあいだ複数の機関に結果が分かれる。前の委託先との契約で保存と廃棄の時期を決めておく必要がある
新しい保存担当者へまとめて引き継ぐ保存先が1か所になり、経年比較もしやすい受け渡しの方法(形式・暗号化・受け渡しの記録)を決める必要がある。前の委託先側のデータを消す時期も決める

乗り換えの前に契約と社内で決めておきたいこと

乗り換えでつまずきやすいのは、法令よりも契約の段取りです。厚生労働省のマニュアルは、外部機関に委託する場合は契約書に保存に関する事務も含めておくよう求めています。次の5点を、今の委託先との契約終了前に確かめておくと安心です。

  1. 今の契約の保存条項:契約が終わった後も5年間保存してもらえるか、その費用はかかるか。
  2. 取り出せる形式:過去の結果をどの形式(CSVなど)で、どの項目まで出してもらえるか。個人のデータ、高ストレスかどうかの評価、面接指導の対象かどうかの判定は、マニュアルが保存の対象として挙げている項目です。
  3. 受け渡しの経路:誰から誰へ、どの方法で渡すか。事業者の指示として行うことを、文書で残しておく。
  4. 前の委託先での廃棄:引き継ぎが終わった後、前の委託先のデータをいつ消すか。消したことの報告をもらうか。
  5. 社内規程の更新:実施規程に書いてある実施者・保存担当者・保存場所を新しい体制に書き換え、衛生委員会で審議しておく。
今の委託先に「契約終了後のデータの扱い」を聞くのは、乗り換えを決める前でも構いません。答えが返ってくるまでの時間や中身は、今の委託先の管理体制を知る手がかりにもなります。

経年比較を途切れさせないために

経年比較とは、集団分析の結果を前年と並べて、職場ごとのストレス状況の変化を見ることです。委託先を変えると、前年までの集団分析は前の委託先の帳票に、今年の分は新しい委託先の帳票に分かれてしまい、比べにくくなることがあります。

  • 調査票をそろえる:前年と同じ調査票(職業性ストレス簡易調査票の57項目版など)を使わないと、数字を並べても比べられません。
  • 集計単位をそろえる:部署の区切り方が変わると、同じ名前の部署でも比較になりません。組織変更があった年は特に確認が必要です。
  • 前年の集団分析結果を手元に残す:集団分析の結果は個人が特定されない形のため、事業者が受け取れます。厚生労働省のマニュアルは、集団分析の結果も事業者が5年間保存することが望ましいとしています。

集団分析の結果を事業者が保存していれば、委託先が変わっても前年の数字は手元に残ります。新しい委託先に前年の集団分析結果を渡し、比較の形で報告してもらえるかを、見積もりの段階で聞いておくとよいでしょう。

まとめ

ストレスチェックの委託先を変えても、過去の結果の扱いは厚生労働省のQ&Aで整理されています。各委託先がそれぞれ保存する形も、事業者の指示で新しい保存担当者へまとめて引き継ぐ形も認められ、引き継ぎに本人の同意は要りません。決めておくべきは、誰が5年間持つか、どの形式でどう渡すか、前の委託先のデータをいつ消すか、そして経年比較をどうつなぐかです。保存の基本はストレスチェック結果の保管義務と管理方法、委託先選びは外部委託業者の選び方、集団分析の数値の見方は集団分析の読み方と数値の見方で解説しています。

よくある質問

ストレスチェックの委託先を毎年変えてもよいですか?

変えても構いません。厚生労働省のストレスチェック制度関係Q&A(Q10-1)では、委託先が変われば、それぞれの外部機関が実施した分の結果をそれぞれの機関で保存するとされています。保存期間と契約終了後の扱いを、各委託先との契約で決めておくことが大切です。

前の委託先が持っている結果を、新しい委託先に移すには本人の同意が必要ですか?

事業者の指示に基づき、前の保存担当者から新しい保存担当者へ渡す場合は、本人の同意は不要です。厚生労働省のQ&A(Q10-2)は、これを規則第52条の11の義務を遂行するために必要な行為としています。ただし、渡す先は実施者や実施事務従事者で、人事担当者が個人結果を受け取ってよいわけではありません。

同意のない個人結果も、会社が5年間保存する義務がありますか?

会社(事業者)自身に保存の義務があるのは、本人が同意して事業者に提供された結果です(規則第52条の13第2項・5年間)。同意のない結果は実施者などが保存し、5年間保存することが望ましいとされています。事業者には、その保存が適切に行われるよう措置を講じる義務があります。

委託先を変えると、集団分析の経年比較はできなくなりますか?

できなくなるわけではありません。前年と同じ調査票を使い、部署などの集計単位をそろえ、前年の集団分析結果を事業者が手元に残しておけば比較できます。厚生労働省のマニュアルは、集団分析の結果も事業者が5年間保存することが望ましいとしています。