WellMil WellMil

記事一覧

ストレスチェック結果の保管義務と管理方法|保存期間・電子管理の注意点を解説

|人事・労務

ストレスチェック結果の保管義務とは

労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度では、実施結果の保存期間について明確なルールが定められています。適切に管理しないと、労働基準監督署の調査で指摘を受けるリスクがあります。

本記事では、保存期間・保管方法・廃棄手順・個人情報保護の観点から、実務担当者が押さえるべきポイントを整理します。書面(紙)と電子データのどちらで管理する場合でも共通して守るべき要件を中心に解説します。

保存期間:原則5年間

保存期間のルールは記録の種類によって異なります。本人の同意を得て事業者が受け取ったストレスチェック結果は、事業者に5年間の保存が義務づけられています(労働安全衛生規則第52条の13)。同意のない結果は実施者が保存し、保存期間は指針で5年間が望ましいとされています。面接指導の記録は5年間の保存義務があります(同規則第52条の18)。労働基準監督署への報告書の控えには法定の保存期間はありませんが、社内ルールを決めて保存しておくことをおすすめします。

保存が必要な書類の例
  • ストレスチェックの調査票(受検者分)
  • 個人の結果通知書のデータ
  • 医師による面接指導の実施記録
  • 労働基準監督署への定期報告書の控え
  • 集団分析の結果(任意だが5年保管を推奨)

なお、個人のストレスチェック結果は、本人の同意なく事業者が閲覧することはできません。事業者が本人の同意なく把握できるのは「受検の有無」までです。高ストレスに該当するかどうかを含む結果は、本人の同意(面接指導の申出を含む)がある場合に限り事業者に提供されます。結果通知書の書き方・記載例はストレスチェック結果通知書の書き方と記載例で解説しています。

誰が保管するのか:実施者と事業者の役割分担

ストレスチェックの記録管理は、実施者(医師・保健師・公認心理師など)と事業者の間で役割が分かれます。それぞれの責任範囲を明確にしておくことが、安全な記録管理の出発点になります。

記録の種類保管主体
個人の調査票・結果データ実施者(または実施事務従事者)
面接指導が必要な者のリスト(本人同意あり)事業者も保管可
労基署報告書の控え事業者
集団分析結果事業者(個人が特定できない形で)

外部委託でストレスチェックを実施している場合は、委託先(クラウドサービス・EAP機関など)がサーバー上でデータを保管することが一般的です。この場合、委託契約書に「5年間の保存義務」と「廃棄時の手続き」を明記しておくことが重要です。

紙管理と電子管理:それぞれの要件

紙での保管

紙の調査票をそのまま保管する場合は、以下の点に注意が必要です。管理が属人化しやすいため、担当者が変わっても対応できるよう社内ルールとして文書化しておくことを推奨します。

  • 鍵のかかるキャビネットに保管し、閲覧権限を限定する
  • 実施者以外がアクセスできない場所に保管する
  • 5年経過後は適切にシュレッダー処理する(ゴミ箱への廃棄は不可)
  • 担当者が交代する際は引き継ぎ記録を残す

電子データでの保管

クラウドサービスや社内システムで管理する場合の主な要件は次のとおりです。紙管理よりも漏えいリスクの管理が重要になります。

  • アクセスログを記録し、不正アクセスを検知できる状態にする
  • データの暗号化(通信・保存の両方)
  • バックアップを定期的に取得し、5年間のデータ保全を保証する
  • 退職者データも5年間は削除しない
  • システム移行時のデータ引き継ぎ計画を事前に策定する

「誰が結果データにアクセスできるか」という権限設計も、保管方法と並んで重要な論点です。会社側(上司・人事)がどこまで閲覧できるかの線引きはストレスチェック結果を会社が見られる範囲と閲覧禁止ルールで解説しています。

ストレスチェック専用クラウドサービスを利用している場合は、サービス規約上の「データ保管期間」と「契約解除時の扱い」を必ず確認してください。契約を解除すると同時にデータが削除されるケースがあります。

個人情報保護法との関係

ストレスチェックの結果は要配慮個人情報(健康情報)に該当するため、個人情報保護法の厳格な規制対象となります。通常の個人情報よりも取り扱いが制限されており、違反した場合の行政処分リスクも高くなります。

要配慮個人情報として守るべき主な義務
  • 本人の同意なく第三者に提供することは原則禁止
  • 安全管理措置(物理的・組織的・技術的対策)が義務
  • 漏えい発生時は個人情報保護委員会への報告義務がある
  • 開示・訂正・削除の請求に対応できる体制を整える

なお、この個人情報保護法は2026年7月17日に改正法が公布されており、委託先への規律や課徴金制度の導入などが盛り込まれています。施行日は未確定ですが、ストレスチェックの健康情報にどう影響するかは改正個人情報保護法とストレスチェックの健康情報で解説しています。

廃棄のルール

5年が経過した記録は適切に廃棄する必要があります。廃棄後のデータ復元ができない状態にすることが重要で、方法や日付を記録として残しておくと後の証明に役立ちます。

  • 紙:シュレッダー処理または機密文書処理業者への委託
  • 電子データ:専用ツールによる完全削除(ゴミ箱を空にするだけでは不十分)
  • 廃棄した記録の日付・方法・担当者を記録として残す
  • 外部委託先のデータについては委託先での廃棄完了報告を受け取る

外部委託時の注意点

ストレスチェックを外部委託している場合、委託先の管理体制を確認することが事業者の義務です。以下のポイントを委託契約書や利用規約で確認してください。内部監査や定期確認の際のチェックリストとしても活用できます。

  • データの保管場所(国内サーバーか)
  • 保管期間の保証(5年間)
  • 委託契約終了後のデータ返却・削除手順
  • 再委託(サブプロセッサー)への個人情報提供の有無
  • セキュリティ事故発生時の通知義務と対応フロー
ストレスチェック記録の管理は「個人情報保護法」と「労働安全衛生規則」の両方が絡む複合領域です。外部委託先のクラウドサービスを使っている場合も、最終的な管理責任は事業者側にあります。委託契約書で保管期間と廃棄手順を明文化しておくことが後のトラブル防止につながります。
まとめ:ストレスチェック記録管理の要点
  • 同意を得て事業者が受け取った結果と面接指導の記録は5年間の保存義務(労働安全衛生規則第52条の13・第52条の18)。同意のない結果は実施者が5年間保存するのが望ましい(指針)
  • 個人結果は実施者が管理し、事業者は本人同意なく閲覧不可
  • 電子管理の場合は暗号化・アクセス制御・バックアップが必要
  • 外部委託時は委託契約書でデータ保管・廃棄手順を明記
  • 廃棄は5年経過後に適切な方法で実施し、廃棄記録を残す
  • 2028年4月1日施行の義務化拡大後は50人未満の事業場にも保存義務が生じる

よくある質問

ストレスチェック結果の保存期間は何年ですか?

本人の同意を得て事業者が受け取ったストレスチェック結果は、労働安全衛生規則第52条の13により事業者に5年間の保存が義務づけられています。面接指導の記録も同規則第52条の18により5年間の保存義務があります。同意のない結果は実施者が保存し、5年間の保存が望ましいとされています(指針)。5年経過後は適切な方法(シュレッダー・完全削除)で廃棄してください。

事業者はストレスチェックの個人結果を見ることができますか?

原則として、事業者は従業員個人のストレスチェック結果を閲覧することはできません。結果は実施者(医師・保健師等)が管理し、事業者が受け取れるのは「受検の有無」と「面接指導が必要と判断されたか(本人同意がある場合)」のみです。個人情報保護の観点から、本人の同意なく結果を事業者に提供することは禁止されています。

電子データで管理する場合に必要な要件は何ですか?

電子管理の主な要件は①データの暗号化(通信・保存の両方)、②アクセス権限の設定(実施者以外は閲覧不可)、③アクセスログの記録、④定期バックアップと5年間の保全保証、⑤退職者データも5年間は削除しないことです。外部クラウドサービスを利用する場合は、契約解除時のデータ返却・削除手順も確認してください。

外部委託先でデータを保管している場合、事業者に管理義務はありますか?

はい、最終的な管理責任は事業者にあります。外部委託先を選定する際は、①国内サーバーでの保管、②5年間の保管期間保証、③契約終了後のデータ返却・削除手順、④セキュリティ認証(ISO27001・プライバシーマーク等)の取得状況を確認してください。委託契約書にこれらを明記しておくことが重要です。

50人未満の企業もストレスチェックの記録保存義務がありますか?

現在、ストレスチェックの実施義務は50人以上の事業場に限られていますが、50人未満でも努力義務として実施している場合は、実施した記録を適切に保管することが推奨されます。2025年5月14日公布の改正労働安全衛生法により、政令で2028年4月1日施行が確定しており、この施行後は50人未満にも実施義務・保存義務が生じます。

ストレスチェック記録が漏えいした場合、どうすればよいですか?

ストレスチェック結果は要配慮個人情報(健康情報)に該当するため、漏えい(そのおそれを含む)が発生した場合は、件数にかかわらず(1人分でも)個人情報保護委員会への報告が義務となります。また、本人への通知も必要です。速やかに被害状況を把握し、個人情報保護委員会の報告様式に沿って手続きを進めてください。社労士や弁護士への相談も検討してください。

集団分析の結果データも5年間保管する必要がありますか?

集団分析は労働安全衛生法上の努力義務のため、結果データの保管期間に法的な定めはありません。集団分析データは個人が特定できない形(10人以上の集計単位)で管理するため、個人情報保護の制限は比較的緩やかですが、職場改善の経緯を追跡するためにも長期保管が望ましいです。

ストレスチェックの調査票(紙)を電子化してもよいですか?

はい、紙の調査票をスキャンして電子データ化し、原紙を廃棄することは認められています。ただし電子データへの変換後も、5年間の保管義務と個人情報保護の要件(アクセス制限・暗号化等)は変わりません。電子化の際はデータ品質(解像度・文字の判読性)を確保し、元データと同等の情報が保全されていることを確認してください。

従業員が退職した後もストレスチェックデータを保管し続ける必要がありますか?

はい、退職後も実施時から5年間の保管義務が継続します。退職者のデータは在籍中と同様にアクセス制限を維持したまま保管し、5年経過後に適切に廃棄してください。事業者に保存義務がある記録(同意を得て受け取った結果・面接指導の記録)を5年以内に削除すると法令違反になるため注意が必要です。なお、退職者本人から開示請求があった場合は、保有個人データとして対応が必要です。

クラウドサービスを乗り換えるとき、過去のストレスチェックデータはどう移行しますか?

クラウドサービス切替時は、旧サービス事業者からCSVやJSON等の汎用フォーマットでデータを取り出し(エクスポート機能の有無を事前確認)、新サービスへインポートするか、別媒体(暗号化USB・セキュアなクラウドストレージ)で一時保管します。乗り換え後も5年間の保管義務は継続するため、旧データが失われないよう移行完了・検証後に旧サービスを解約してください。契約時に「データポータビリティ保証」の条項があるかを確認しておくと安全です。

高ストレス者の面接指導記録はどのように保管すればよいですか?

医師による面接指導の結果は、安衛則第52条の18により事業者が記録を作成し、5年間保存する義務があります。記録には①実施年月日、②労働者の氏名、③面接指導を行った医師の氏名、④労働者の勤務の状況、⑤労働者の心理的な負担の状況その他の心身の状況、⑥医師の意見を記載します。人事等への共有は、就業上の措置に必要な範囲に限ってください。

複数の事業場を持つ企業は、どの事業場でデータを一括管理できますか?

労働安全衛生法上、ストレスチェックの実施義務は「事業場ごと」に課せられています。本社が各事業場のデータを一括管理することは可能ですが、アクセス権は事業場単位で厳格に区切る必要があります。特定の事業場の担当者が他事業場の個人データを閲覧できる状態は望ましくありません。クラウドシステムを利用する場合は、テナント分離または事業場別のアクセス制御機能が実装されているか確認してください。

5年が経過したストレスチェックデータを廃棄する際に証明書は必要ですか?

法令上、廃棄証明書の発行は義務付けられていませんが、外部委託先に廃棄を依頼した場合は廃棄証明書を受領しておくことを強く推奨します。これは万一の情報漏えい疑惑や監査対応において廃棄事実を証明する重要な記録となります。自社で廃棄する場合は廃棄日・廃棄担当者・廃棄方法を記録した廃棄台帳を作成し、保管してください。個人情報保護委員会のガイドラインでも適切な廃棄記録の保持が推奨されています。