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出向者へのストレスチェック実施ガイド|出向元・出向先どちらが実施義務を負うのか

|ストレスチェック

この記事のポイント

  • 在籍出向者のストレスチェックは、指揮命令権・賃金支払い等の実態を総合的に勘案して出向元・出向先いずれかで実施する(厚生労働省Q&A)
  • 転籍出向は出向元との労働契約が終了するため、出向先が実施義務を全面的に負う
  • 集団分析は実態にかかわらず、出向先が出向者を含めて実施することが望ましいとされている
  • 判断に迷う場合は、出向契約書に実施主体・費用負担・結果の取り扱いを明記しておくことがトラブル防止になる

出向者のストレスチェックは出向元・出向先どちらが実施する?

結論:在籍出向者のストレスチェックは、指揮命令権・賃金の支払いなど労働契約関係の実態を総合的に勘案し、出向元・出向先のいずれかで実施します。一律に「出向元が実施する」「出向先が実施する」と決まっているわけではなく、実態に応じた個別判断が必要です。この考え方は厚生労働省「ストレスチェック制度に関するQ&A」で示されています。

ストレスチェックの実施義務は労働安全衛生法第66条の10に基づき、「常時使用する労働者」に対して労働契約関係のある事業者が負います。出向者の場合、この「労働契約関係がどちらにあるか」の判定が実施主体を決めるポイントになります。

在籍出向と転籍出向の違いとは?

在籍出向とは、労働者が出向元との労働契約を維持したまま、出向先の指揮命令を受けて就労する形態です。出向元・出向先の両社と何らかの契約関係が併存する点が特徴です。

転籍出向(転籍)とは、出向元との労働契約を終了させ、出向先と新たに労働契約を締結する形態です。労働契約関係は出向先のみとなるため、実質的には転職と同じ扱いになります。

この2つは法律上まったく異なる扱いを受けるため、まず自社の出向がどちらの形態かを確認することが第一歩です。

在籍出向者は出向元・出向先のどちらが実施義務を負う?

在籍出向の場合、出向先事業者と出向労働者の間に労働契約関係が存在するかどうかは、以下の実態を総合的に勘案して判断します。

  • 指揮命令権:日常の業務指示・勤怠管理を行っているのはどちらか
  • 賃金の支払い:給与を実質的に負担しているのはどちらか
  • 就業規則の適用:どちらの就業規則・労働条件が適用されているか

出向先が実施主体となるケース

出向先の指揮命令下で業務を行い、出向先の就業規則が適用され、賃金も出向先が実質的に負担しているようなケースでは、出向先が実施主体となるのが自然です。実態として出向先の「常時使用する労働者」に近い働き方をしている場合がこれにあたります。

出向元が実施主体となるケース

出向元が賃金支払いや労務管理の主体であり続け、出向先はあくまで就労場所の提供にとどまるようなケースでは、出向元が実施主体となります。出向元の就業規則が適用され続けている場合もこれに近い扱いです。

両者の違いを整理すると次のとおりです。

比較項目在籍出向転籍出向
労働契約関係出向元との契約を維持したまま出向先の指揮命令を受ける出向元との契約を終了し出向先と新契約を締結
ストレスチェック実施主体指揮命令権・賃金支払い等の実態で判断出向先が全面的に実施義務を負う
集団分析実態にかかわらず出向先が出向者を含めて実施することが望ましい出向先の通常の集団分析に含める
在籍出向は契約書の名目だけでなく実態で判断されます。「出向契約書に出向元実施と書いてあるから」だけで済ませず、指揮命令権・賃金・就業規則の3点を実際に確認してください。

転籍出向者の場合はどうなる?

転籍出向は出向元との労働契約が終了し、出向先と新たな労働契約を締結する形態のため、出向先が実施義務を全面的に負います。通常の中途採用者と同様に、出向先の「常時使用する労働者」としてカウントし、出向先の実施体制(実施者・実施時期・集団分析等)に組み込みます。

出向者の集団分析はどちらが行うべき?

集団分析については、在籍出向の実態にかかわらず、出向先事業者が出向者も含めて実施することが望ましいとされています(厚労省Q&A)。理由は、集団分析が「職場単位」で実施することに意味があるためです。Q&Aでは、出向先が出向者も含めてストレスチェックを実施するとともに、集団分析を実施することが望ましいとされています。

実務上の判断チェックリスト

自社の出向者について実施主体を判断する際は、以下を確認してください。

  • 出向者に対して日常的に指揮命令・勤怠管理を行っているのはどちらか
  • 出向者の給与を実質的に負担しているのはどちらか
  • 出向者にはどちらの就業規則が適用されているか
  • 出向契約書にストレスチェックの実施主体について記載があるか
  • 出向者数を含めた事業場単位の人数カウントに漏れがないか(50人以上の判定に影響する場合がある)

出向契約書に明記しておくべき事項

出向者のストレスチェックをめぐるトラブルの多くは、実施主体が曖昧なまま出向がスタートすることに起因します。出向契約書(出向協定書)を作成する際は、以下の点を明記しておくことをお勧めします。

  • ストレスチェックの実施主体(出向元・出向先いずれか)
  • 実施費用の負担者
  • 結果の通知先と保管者、本人同意のない第三者提供の禁止
  • 高ストレス者と判定された場合の面接指導の対応主体
  • 集団分析への出向者データの含め方

あらかじめ書面で取り決めておくことで、出向開始後の実施漏れや責任の押し付け合いを防げます。

関連記事:ストレスチェックの対象範囲を確認する

出向者以外にも、雇用形態によって対象範囲の判断が分かれるケースがあります。あわせてご確認ください。

まとめ:出向者のストレスチェック対応

出向者のストレスチェック対応は以下のように整理できます。

  • 在籍出向:指揮命令権・賃金支払い・就業規則の適用など実態を総合的に勘案し、出向元・出向先いずれかで実施
  • 転籍出向:出向先が実施義務を全面的に負う(通常の労働者と同じ扱い)
  • 集団分析:実態にかかわらず出向先が出向者を含めて実施することが望ましい
  • 実務対応:出向契約書に実施主体・費用負担・結果の取り扱いを明記しておく

判断に迷う場合は、社会保険労務士や産業保健スタッフに相談することをお勧めします。

よくある質問

出向者のストレスチェックは出向元と出向先のどちらが実施しますか?

在籍出向の場合、指揮命令権・賃金の支払いなど労働契約関係の実態を総合的に勘案して判断します(厚生労働省Q&A)。日常的に指揮命令を行い、賃金を実質的に負担している側が実施主体となるのが一般的です。

転籍出向者の場合はどうなりますか?

転籍出向は出向元との労働契約が終了し、出向先と新たに労働契約を結ぶ形態のため、出向先が実施義務を全面的に負います。通常の労働者と同じ扱いになります。

出向者の集団分析は出向元・出向先どちらで行うべきですか?

職場単位で実施することが重要なため、在籍出向の実態にかかわらず、出向先が出向者を含めて集団分析を実施することが望ましいとされています(厚生労働省Q&A)。

出向元・出向先どちらが実施すべきか判断に迷う場合はどうすればよいですか?

指揮命令権の所在・賃金の支払い元・就業規則の適用状況の3点を確認し、実態に基づいて判断します。判断が難しい場合は、出向契約書にストレスチェックの実施主体と費用負担を明記しておくことでトラブルを防げます。

海外関連会社への出向者にもストレスチェックは必要ですか?

海外現地法人に雇用される(転籍する)形態の場合は日本の労働法が適用されず実施義務はありません。ただし、日本企業に籍を置いたまま長期出張の扱いで海外に赴任している社員は、一般健診と同様にストレスチェックの実施が必要です(厚生労働省Q&A)。

出向者本人の同意なくストレスチェックの結果を出向元・出向先間で共有してもよいですか?

本人の同意なく結果を共有することはできません。実施主体側が結果の管理責任を負い、出向元・出向先間で情報を共有する場合も本人の同意取得が前提となります。