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ストレスチェックにおける役員・取締役の取り扱いガイド|労働者性の判断基準と実務対応

|ストレスチェック

この記事のポイント

  • 代表取締役・取締役・監査役は委任契約のため、原則としてストレスチェックの対象外(労安衛法第66条の10)
  • 使用人兼務役員(指揮監督を受け、賃金を受けている等)は「労働者」として対象になるケースあり
  • 執行役員は雇用型なら対象、委任型は対象外
  • 役員の任意受検は法的に問題なし(同意書を取っておくと安心)

ストレスチェックにおける役員の対象範囲まとめ

結論:代表取締役・取締役・監査役などの役員は、原則としてストレスチェックの対象外です。労働安全衛生規則第52条の9が定める実施対象は「常時使用する労働者」であり、委任契約に基づく役員は「労働者」に該当しないためです(労働基準法第9条)。

ただし、使用人兼務役員(指揮監督を受け、賃金を受けている等、実質的に労働者として働いている役員)は対象になるケースがあります。また、役員が希望する場合の任意受検も認められています。

「役員だから全員対象外」と機械的に処理してしまうと、使用人兼務役員を見落とすリスクがあります。本記事では役員の種類ごとの判断基準と実務対応を解説します。

「労働者」かどうかはどう判断するか

ストレスチェック制度は労働安全衛生法第66条の10・労働安全衛生規則第52条の9に基づき「常時使用する労働者」を対象としています。ここでいう「労働者」とは、労働基準法第9条の定義(使用者に使用され、賃金を支払われる者)と同一です。

役員(取締役・代表取締役・監査役・社外取締役)は会社との関係が委任契約(民法第643条)であり、指揮監督を受ける雇用契約(労働契約)ではないため、原則として「労働者」には当たりません。

判断基準となる主なポイントは以下のとおりです。

  • 上位者からの指揮監督を受けているか
  • 役員報酬とは別に「給与・賃金」を受け取っているか
  • 就業規則の適用を受けているか
  • 雇用保険の被保険者になっているか(参考になる事情の一つ。これだけで決まるわけではない)
「役員だから絶対に対象外」ではありません。実態が重要です。役職名ではなく、指揮監督を受けているか・賃金を受けているかという実質で判断する必要があります。

役員の種類別:ストレスチェック対象かどうか

代表取締役・取締役(業務執行役員)

会社と委任関係にあるため、原則として対象外です。後述の「使用人兼務役員」に該当する場合は例外があります。

監査役

監査役も委任契約に基づく役員であるため、原則対象外です。使用人としての兼務がない限り、ストレスチェックの義務対象には含まれません。

社外取締役

社外取締役も委任関係であるため対象外が原則です。通常は当該会社の雇用関係はないため、一般的に対象とはなりません。

執行役員

執行役員は会社法上の役員ではなく、会社内部の職制上の呼称にすぎません。そのため、会社との契約形態が重要です。

  • 雇用型執行役員(雇用契約に基づく):「労働者」としてストレスチェックの対象になります
  • 委任型執行役員(登記された取締役を兼ねる場合など):対象外となります

自社の執行役員がどちらの契約形態かを確認してください。わからない場合は社会保険労務士に相談することをお勧めします。

使用人兼務役員

取締役でありながら、同時に「部長」「工場長」などの使用人としての職制を有し、実態として労働者と同じ働き方をしているケースが該当します(雇用保険の加入は参考になる事情の一つです)。この場合、使用人(労働者)としての部分についてはストレスチェックの対象とみなすことが一般的です。実態として労働者と同じ働き方であれば、労働者として扱う必要があります。

中小企業では、代表取締役の配偶者が役員(取締役)として登記されながら、実際には従業員と同じ業務をこなしているケースも見受けられます。このような場合も実態で判断する必要があります。

役員が任意でストレスチェックを受検する場合

役員がストレスチェックの受検を希望する場合は、受検しても差し支えありません(法的義務はないが禁止もされていない)。任意受検を実施する場合のポイントは以下のとおりです。

  • 同意書:任意受検であること・結果の取り扱いを明示した同意書を取っておくと安心(法令上の要件ではない)
  • 個人情報の取り扱い:役員本人の同意なしに結果を他者に開示しない(特に使用者側の他の役員への開示は慎重に)
  • 実施者の確認:役員を「実施者」とすることは利益相反になりうるため、外部機関への委託が望ましい
  • 集団分析への含め方:任意受検の役員を集団分析に含めるかどうかを事前に方針決定しておく

中小企業における実務上の注意点

中小企業では、役員が実質的に現場の業務も担うケースが少なくありません。「役員だから対象外」と機械的に処理するのではなく、以下の観点で個別に判断することが重要です。

  • 日常業務において上位者(他の取締役・株主等)の指揮監督を受けているか
  • 役員報酬以外に「給与」として賃金を受け取っているか
  • その役員は雇用保険に加入しているか(参考になる事情の一つ)

50人以上の事業場では、ストレスチェックの対象者範囲を衛生委員会等で事前に審議し、文書化しておくことが望ましいです。対象者の取り扱いについて基準を設けることで、トラブルを未然に防げます。

50人未満事業場(2028年4月1日施行で義務化対象が拡大)では、義務化に向けて今から対象者範囲の整理を始めておくことをお勧めします。

まとめ:役員のストレスチェック対象範囲

役員のストレスチェック対象は以下のように整理できます。

  • 代表取締役・取締役・監査役・社外取締役:原則として対象外(委任契約のため)
  • 使用人兼務役員:対象になるケースあり(実質的に労働者と同じ働き方をしている場合)
  • 執行役員(雇用型):対象
  • 執行役員(委任型・取締役兼務):対象外が原則
  • 任意受検:役員が希望する場合は実施可能(同意書を取っておくと安心)

判断に迷う場合は、社会保険労務士や産業保健スタッフに相談することをおすすめします。

よくある質問

代表取締役はストレスチェックの対象になりますか?

代表取締役は会社と委任関係にあり、労働基準法上の「労働者」には該当しないため、原則としてストレスチェックの対象外です。ただし、実質的に雇用関係がある(指揮監督を受け、賃金を受けている等)場合は例外的に対象となります。

使用人兼務役員はストレスチェックの対象ですか?

使用人兼務役員とは、取締役でありながら部長や工場長などの使用人としての職制も持ち、実態として労働者と同じ働き方をしているケースです(雇用保険の加入は参考になる事情の一つです)。この場合、使用人(労働者)としての部分についてはストレスチェックの対象とみなすことが一般的です。

執行役員はストレスチェックの対象になりますか?

執行役員が雇用契約に基づく場合は「労働者」としてストレスチェックの対象になります。委任型(登記された取締役を兼ねる場合など)であれば対象外となります。自社の執行役員の契約形態を確認してください。

役員がストレスチェックを自分から受検したい場合はどうすればよいですか?

役員は法的な義務はありませんが、希望する場合はストレスチェックを受検できます(任意受検)。受検の際は「任意受検である旨の同意書」を取っておくと安心です(法令上の要件ではありません)。そのうえで、個人情報の取り扱いルール(同意なしに第三者への開示禁止)を明確にしたうえで実施してください。

社外取締役はストレスチェックの対象になりますか?

社外取締役も委任関係にあるため、原則としてストレスチェックの対象外です。社外取締役が他の業務(雇用契約を伴う業務)を行っている場合は個別に判断が必要です。