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ストレスチェック集団分析の省令改正(2027年4月施行)|何が変わり、何が変わらないか

|労務管理

この記事の結論

2027年4月1日から、ストレスチェックの集団分析は「特定の個人を識別することができない方法で」行うことが労働安全衛生規則に明記されます。厚生労働省の施行通達は、これを従来の解釈の明文化とし、運用は変えないとしています。やることは「10人の線」と委託先の集計方法を確かめ直すことです。

2027年4月施行の省令改正とは何か

集団分析の省令改正とは、労働安全衛生規則第52条の14第1項に「特定の個人を識別することができない方法で」という文言を加える改正です。根拠は「労働安全衛生規則の一部を改正する省令」(令和8年厚生労働省令第112号)で、2026年6月30日に公布され、2027年4月1日に施行されます(出典:厚生労働省リーフレット「ストレスチェックの『集団分析』を適切に実施しましょう!」2026年7月)。

改正後の条文は、事業者が、ストレスチェックを行った医師等に、部署などの一定規模の集団ごとに「特定の個人を識別することができない方法で」結果を集計・分析させるよう努めなければならない、という内容です。集団分析が努力義務であることは変わりません。

何が変わり、何が変わらないのか

変わるのは条文の書きぶりだけで、現場の運用は変わりません。同日付の施行通達(令和8年6月30日付け基発0630第2号)は、今回の追加を「個々の労働者が特定できないことを前提とする従来の解釈を明文化した趣旨」と説明し、「従来の運用に変更を加えるものではない」と明記しています。

項目2027年3月まで2027年4月から
集団分析の位置付け努力義務努力義務(変更なし)
個人が特定されない方法で行うこと指針・マニュアルでの解釈省令の条文に明記
具体的な運用(10人の線など)指針・実施マニュアルに従う同じ(変更なし)

個人が分かる集計は「やったことにならない」

施行通達は、特定の個人を識別できる方法で集団分析を行っても、努力義務を果たしたことにはならないとしています。さらに、労働者のプライバシー保護の観点から許容されない趣旨だと述べています。つまり「部署の人数が少ないけれど、とりあえず部署別に出しておく」という集計は、改正後は条文上もはっきり否定される形になります。

「10人の線」はどう数えるのか

集団分析で個人が特定されないための目安は、集計単位あたり10人です。厚生労働省の「ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和3年2月改訂)は、集計・分析の単位が10人を下回る場合は個人が特定されるおそれがあるため、原則として対象者全員の同意がない限り、結果を事業者に提供してはいけないとしています。2026年7月のリーフレットも、10人を下回る単位では原則として集団分析を実施しないよう求めています。

10人は在籍者数ではなく受検者数で数える

10人の数え方は、在籍している人数ではなく、実際に受検した人数(有効なデータの数)です。同マニュアルは、部署に10人以上が在籍していても、受検者が10人を下回れば、その部署の集団分析結果を事業者に提供してはいけないとしています。受検率が低い年は、毎年出していた部署別の表が出せなくなることがあります。

10人未満でも認められる方法

10人未満でも、個人の特定につながり得ない方法に限っては集計・分析ができます。同マニュアルとリーフレットが挙げている例は次の2つです。

  • 職業性ストレス簡易調査票の57項目すべての合計点について、集団の平均値だけを求める方法
  • 「仕事のストレス判定図」を用いて分析する方法

ただし、リーフレットはこれらの方法でも「極端に少人数の場合は個人の特定につながるため不適切」としています。3人や4人の部署を単独で出すのは避け、複数の部署を合わせて10人以上の集団を作るのが基本です。

2027年4月までに人事担当者が確かめておきたいこと

運用が変わらない以上、新しく作る書類はありません。それでも条文に明記されることで、集計の仕方を説明できる状態にしておく意味は大きくなります。次の4点を、次回の実施前に確かめておくと安心です。

  1. 集計単位の一覧:部署ごとの前年の受検者数を並べ、10人を下回りそうな単位を洗い出す。下回る単位は、合算する上位の集団を先に決めておく。
  2. 委託先・システムの集計設定:受検者数が10人未満の単位をどう扱うか(非表示にする、合算する、合計点の平均だけにする)を委託先に確認する。
  3. 属性による切り出し:「部署×年代」「部署×性別」のように条件を掛け合わせると、人数が急に小さくなる。切り口を増やすときほど受検者数を確認する。
  4. 実施規程の記載:集団分析の単位と、10人未満の扱いを社内規程に書いておく。衛生委員会での審議事項にも含めておく。
部署別の集団分析結果を社内の会議資料に使っている場合は、受検率が下がると、前年は出ていた部署の数字が出せなくなることがあります。10人の線は在籍者数ではなく受検者数で数えることを、資料を受け取る側にも先に共有しておくと混乱を防げます。

50人未満の義務化とはどう関係するか

今回の集団分析の省令改正は、2027年4月1日に施行されます。これとは別の改正として、従業員50人未満の事業場へのストレスチェック義務化があり、その施行日は政令で2028年4月1日と定められました(出典:佐賀労働局リーフレット)。50人未満の事業場が義務化に備えるときは、集団分析でも10人の線がそのまま当てはまります。事業場全体でも受検者が10人程度にとどまる場合は、部署別には出さず、事業場全体での分析や経年比較から始めるのが現実的です。義務化の日程は50人未満のストレスチェック義務化はいつから?で整理しています。

まとめ

2027年4月1日から、ストレスチェックの集団分析は「特定の個人を識別することができない方法で」行うことが省令に明記されます。施行通達は運用を変えないとしているため、必要なのは新しい手続きではなく、10人の線(受検者数で数える)と10人未満の扱いを、自社の集計と委託先の設定で確かめ直すことです。集団分析の数値の読み方は集団分析の読み方と数値の見方、結果の取り扱いはストレスチェックの個人情報保護、委託先の選び方は外部委託先の選び方で解説しています。

よくある質問

2027年4月の省令改正で、集団分析は義務になりますか?

義務にはなりません。労働安全衛生規則第52条の14の集団分析は、改正後も努力義務です。改正で加わるのは「特定の個人を識別することができない方法で」行うという文言で、厚生労働省の施行通達(令和8年6月30日付け基発0630第2号)は従来の解釈の明文化だとしています。

改正に合わせて、社内の手続きを変える必要はありますか?

施行通達は「従来の運用に変更を加えるものではない」としているため、新しい手続きは求められていません。ただし、受検者数が10人を下回る集計単位の扱いや、委託先の集計設定を確かめておくことをおすすめします。

部署の人数が10人未満のときは、集団分析ができませんか?

原則として、10人未満の単位では集団分析結果を事業者に提供しません。例外として、57項目の合計点の平均値だけを求める方法や「仕事のストレス判定図」を使う方法は認められていますが、極端に少人数の場合は不適切とされています。複数の部署を合わせて10人以上にするのが基本です。

10人は在籍者数で数えますか、受検者数で数えますか?

実際に受検した人数(有効なデータの数)で数えます。厚生労働省のストレスチェック制度実施マニュアルは、在籍者が10人以上でも受検者が10人を下回れば、その集団の分析結果を事業者に提供してはいけないとしています。