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ストレスチェック受検率向上の取り組み方|全国平均・目標設定・具体策を解説

|ストレスチェック

この記事でわかること
  • ストレスチェック受検率の全国平均と目標値の目安
  • 受検を強制できない法的理由と正しい勧奨方法
  • 受検率を上げる5つの実務的取り組み(事例付き)
  • 低受検率事業場が抱える3つの構造的原因と対処法

ストレスチェック受検率の全国平均はどのくらいか

令和5年(1〜12月)のストレスチェック受検率は全国で79.2%です。静岡労働局「令和5年ストレスチェックの実施状況」(50人以上の事業場から労働基準監督署への報告をもとにした集計)によると、静岡県は80.9%で全国を上回っています。

厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」(令和4年3月)では、受検率が約8割を超える事業場は77.5%とされています。

受検率の目標値はどう設定するか

本記事では、目標の目安として90%以上をおすすめします。厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」(令和4年3月)は、高い受検率を確保するよう呼びかけ、受検率を高めることを計画(目標)のひとつに位置づけてもよいとしています。

目標設定の目安の一例は以下のとおりです(公的な基準ではありません)。

目標受検率評価
90%以上推奨。集団分析の信頼性が高まる
80〜89%全国平均水準。さらなる改善が望ましい
79%以下全国平均を下回る。優先的に対策が必要

衛生委員会で前年度の受検率を報告し、毎年5ポイント改善などの数値目標を設定するのが実務的なアプローチです。

なぜ受検率が上がらないのか—3つの構造的原因

原因1:「会社に結果が見られる」という誤解

労働安全衛生法第66条の10第2項により、ストレスチェックの結果は労働者の同意なしに事業者に提供することが禁止されています。にもかかわらず「上司に知られる」「人事評価に影響する」という誤解が受検を妨げるケースが多いです。

原因2:受検の意義が伝わっていない

「義務だから受けろ」という一方的な通知では、受検の目的が伝わりません。個人のメンタルヘルス管理に役立つというメリットを具体的に伝えることが重要です。

原因3:受検の手続きが煩雑

紙の調査票を配布・回収する方式では回収率が低下しやすいです。スマートフォンやPCで受検できるWeb方式は、手続きの負担を減らす選択肢になります。

受検率を上げる5つの実務的取り組み

取り組み1:匿名性と不利益取扱い禁止を丁寧に説明する

実施前に「受検結果は本人の同意なしに会社へ提供されない」「受検しないことを理由に不利益な扱いは行わない」の2点を必ず明示します。労働者には受検義務はなく、受検しないことを理由とした不利益取扱いは厚生労働省の指針で禁止されています。この法的保護を周知することが、受検への不安を取り除く最も効果的な方法です。

取り組み2:衛生委員会で受検勧奨ルールを定める

受検期間中に管理職から声をかけることは合法的な「勧奨」として認められています。衛生委員会でルールを整備し、「管理職から部下への一声かけ」を仕組み化することが考えられます。

ただし、強制や圧迫的な勧奨は「強制」とみなされる場合があり、法の趣旨に反します。「受検しませんか」という提案にとどめることが重要です。

取り組み3:定期健診と同時実施する

定期健康診断と同じタイミングでストレスチェックを実施すると、受検率が毎年9割以上を維持している事例が、厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」(令和4年3月)で紹介されています。「健診のついで」という心理的ハードルの低さが有効に働きます。実施者(産業医・保健師等)と日程を事前調整することで、実施コストの削減にもなります。

取り組み4:Web受検に切り替える

紙調査票からWeb方式に移行すると、回収手続きの手間がなくなり受検率が向上するケースが多いです。外部委託サービスのWebシステムを活用することで、実施事務担当者の作業量削減と受検率向上の両立が図れます。スマートフォン対応のサービスを選ぶことが特に有効です。

取り組み5:リマインド通知を複数回送る

実施期間中(通常1か月程度)に、1週間前・3日前・最終日など複数回のリマインドを送ります。メール・チャットツール・掲示板など複数チャネルを活用することで見落としを防ぎます。

受検率向上の取り組みは「実施前の周知」と「実施期間中のフォロー」の2フェーズに分けて計画するのが効果的です。特に匿名性の説明は全員参加の朝礼や説明資料で行うと効果が高まります。

受検率を衛生委員会でどう報告するか

衛生委員会では毎回または年1回、以下の項目を報告します。

  • 実施対象者数・受検者数・受検率
  • 前年度比較と全国平均との比較
  • 未受検者の把握状況(個人特定しない形で)
  • 翌年度の受検率目標値

目安の一例として、受検率が80%を下回る場合は、原因分析と改善策の審議を行います。「誰が受検していないか」を人事権者が把握することは禁止されていません(受検率の把握と個人の結果の把握は別)が、把握した情報を人事目的で使用することは不利益取扱い禁止の観点から避けるべきです。

まとめ

ストレスチェック受検率は令和5年時点で全国79.2%、目標の目安は90%以上です。受検は労働者に義務がなく、強制は指針で禁止されているため、匿名性の説明・衛生委員会での勧奨ルール整備・Web受検への移行・リマインド通知の仕組み化によって受検率を引き上げることが実務的なアプローチです。

ストレスチェックの実施体制全体の見直しやシステム選定については、ストレスチェックシステムの選び方もあわせてご参照ください。

よくある質問

ストレスチェックの受検率を強制的に100%にすることはできますか?

できません。厚生労働省の指針により、受検しないことを理由とした不利益な取扱いは禁止されています。受検拒否を理由とした懲戒処分や人事上の不利益扱いは法の趣旨に反します。合法的な勧奨(声かけ・リマインド通知)によって受検率の向上を図ることが正しいアプローチです。

ストレスチェックの全国平均受検率はどのくらいですか?

令和5年(1〜12月)の全国の受検率は79.2%です(静岡労働局「令和5年ストレスチェックの実施状況」)。厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」(令和4年3月)では、受検率が約8割を超える事業場は77.5%とされています。本記事では目標の目安として90%以上をおすすめしています。

受検率の管理職への声かけは問題ありませんか?

問題ありません。厚生労働省は、実施期間中に事業者や管理監督者が労働者に対して受検を勧奨することは認めています。ただし、強制的な受検指示や、受検しない場合の不利益をほのめかす発言は避けなければなりません。「受検してみませんか」という程度の声かけが適切です。

受検率が低い事業場はどのような問題がありますか?

受検率が低いと、①高ストレス者を早期発見できず精神疾患による休職・退職リスクが高まる、②集団分析の信頼性が下がり職場環境改善に活用できない、③労働基準監督署への報告事項である受検者数(労働安全衛生規則第52条の21)が低い水準で報告されるという3つの問題が生じます。

定期健診と同時実施すると受検率は上がりますか?

多くの事例で改善が報告されています。定期健診と同じタイミングでストレスチェックを実施することで、受検率が毎年90%を超えている企業があります。心理的ハードルが下がること、健診で産業医と対面するタイミングに受検することへの自然な流れができることが要因です。実施者(産業医・保健師等)の日程調整が必要です。

Web受検と紙受検ではどちらが受検率が高いですか?

一般的にWeb受検の方が受検率が高い傾向があります。紙調査票は配布・回収のタイムラグや紛失リスクがあるのに対し、Web受検はスマートフォンで手軽に受検でき、未受検者への自動リマインドも可能です。ただし、PC・スマートフォンを業務で使わない労働者(製造現場・介護職等)が多い事業場では紙との併用が現実的です。

受検率の把握(誰が受検したか)は事業者がしてもよいですか?

受検の有無の把握自体は可能です。厚生労働省の指針では、事業者は個々の労働者の受検の有無を把握し、受検を勧奨することができるとされています。ただし、把握した受検状況を人事評価・懲戒・配転等の目的で使用することは不利益取扱いに該当するため禁止です。把握の目的は受検勧奨のためであることを衛生委員会でルール化しておくことが重要です。