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産業医がいない事業場のストレスチェック実施ガイド|50人未満の担当者が知っておくべき5つの対処法

|人事・労務

この記事のまとめ
  • 産業医がいない事業場でも、外部委託や地域産業保健センター(地産保)を利用すれば、ストレスチェックを適法に実施できる
  • ストレスチェックの「実施者」には医師・保健師のほか、研修修了した看護師・精神保健福祉士・公認心理師・歯科医師もなれる
  • 50人未満の事業場では2028年4月1日の義務化施行(政令で確定)に向けて今から体制を整えることが重要
  • 外部委託の費用は委託先・プランで異なる。地産保の医師面接指導は無料で利用可能
  • 産業医がいない場合でも、高ストレス者への医師面接指導は地産保・健診機関の医師に依頼できる

産業医がいなくてもストレスチェックは実施できるのか

「産業医がいないからストレスチェックはできない」と誤解している担当者は少なくありません。しかし、ストレスチェック制度において産業医の存在は必須要件ではありません。

労働安全衛生法上、ストレスチェックの「実施者」は産業医に限定されておらず、一定の資格を持つ者であれば誰でも担えます。産業医が不在の事業場であっても、外部委託や公的支援機関の活用により適切に実施することが可能です。

2028年4月1日(政令で施行確定)には50人未満の全事業場にもストレスチェックが義務化されます。産業医の選任義務がない規模の事業場こそ、今から対処法を知っておくことが重要です。

義務化の時期と、産業医がいない事業場が施行前に押さえるべき論点は50人未満の義務化はいつからかで解説しています。

ストレスチェックの「実施者」になれる資格要件

まず、ストレスチェック制度における「実施者」の資格要件を整理します(労働安全衛生規則第52条の10)。

資格研修の要否
医師不要
保健師不要
歯科医師厚生労働大臣指定の研修を修了した者に限る
看護師厚生労働大臣指定の研修を修了した者に限る
精神保健福祉士厚生労働大臣指定の研修を修了した者に限る
公認心理師厚生労働大臣指定の研修を修了した者に限る

産業医は「産業医の資格を持つ医師」であり、医師の一形態に過ぎません。医師・保健師であれば産業医でなくても実施者を担えます。この点が「産業医がいなくてもよい」理由の根拠です。

産業医がいない場合の5つの対処法

1. 地域産業保健センター(地産保)を活用する

最も費用がかからない選択肢です。独立行政法人労働者健康安全機構(JOHAS)が全国の地域ごとに設置している地域産業保健センターでは、50人未満の事業場を対象に無料で以下のサービスを提供しています。

  • 医師による健康相談
  • 高ストレス者への医師面接指導
  • ストレスチェック実施に関する相談・支援

ただし、地産保は「実施者」として調査票の採点・高ストレス者の判定まで担うわけではありません。ストレスチェック全体の実施は外部委託サービスを利用し、高ストレス者の面接指導のみ地産保に依頼するという組み合わせが実務上よく使われます。

2. クラウド型ストレスチェックサービスに外部委託する

実施者(医師・保健師)が委託先機関に在籍しているSaaS型サービスを利用する方法です。調査票の配布・回収・採点・高ストレス者の判定・結果通知まで一括で担ってもらえます。

費用は委託先・プランによって異なります。

3. 健診機関・産業保健サービス機関に委託する

定期健診を依頼している健診機関がストレスチェックも受託しているケースがあります。医師・保健師が在籍しているため、実施者の確保に悩む必要がありません。費用は委託先によって異なり、健診とのセット割引が適用されることもあります。

4. 社労士・産業保健コンサルタントと連携する

社会保険労務士や産業保健コンサルタントの中には、保健師資格を持つ者や医師と連携してストレスチェックの実施支援を行う者もいます。月額契約でストレスチェック以外の労務管理も含めてサポートしてもらえる場合があり、専任担当者がいない中小企業に向いています。

5. 社内の保健師・看護師(研修修了者)を活用する

製造業や医療機関など、社内に保健師や看護師が在籍している事業場では、厚生労働大臣指定の研修を修了させることで実施者にすることができます。研修の実施団体は、地域の産業保健総合支援センターなどで確認できます。一度取得すれば継続的に内部で実施できるため、規模が拡大した場合のコスト削減にもなります。ただし、解雇・昇進・異動に直接の権限を持つ立場の人は実施者になれません(労働安全衛生規則第52条の10第2項)。

高ストレス者への医師面接指導はどうするか

高ストレス者から面接指導の申し出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施しなければなりません。産業医のいない50人未満の事業場では、次の方法で対応します。

  • 地域産業保健センターの登録医に依頼:無料で利用可能。事前に最寄りの地産保に登録・問い合わせておくことが必要
  • 委託先の外部委託機関が面接指導も対応:サービス内容を事前に確認する
  • 地域のかかりつけ医(一般医)に依頼:費用は発生するが、内容を事前に合意した上で依頼することで対応可能
50人未満の事業場では、まず「地域産業保健センターに相談する」ことをお勧めします。無料相談の中で自社の状況に合った実施方法を一緒に考えてもらえます。義務化が近づいている今、早めに体制を確認しておくことが重要です。

2028年義務化までのロードマップ

2028年4月1日の施行を踏まえ、50人未満の事業場は以下のスケジュールで準備を進めることが推奨されます。

  • 2026年中:実施方式の検討・外部委託先の比較選定・地産保への相談
  • 2027年度:実施規程の策定・試行実施(任意)・体制の整備
  • 2027年度末:外部委託契約の締結
  • 2028年4月以降:義務実施開始(施行後は1年以内ごとに1回。初回の時期は所轄の監督署・マニュアルで確認)

施行日は2028年4月1日(令和10年4月1日)で、政令により確定しています。準備に要する時間を考えると今から動き出すことが重要です。

費用を抑えるための助成金

労働者健康安全機構の「団体経由産業保健活動推進助成金」は、事業主団体(商工会・業界団体など)が傘下の企業に産業保健サービスを提供する費用を助成するもので、50人未満の事業場のストレスチェックの実施・集団分析も対象です。企業が直接申請するものではないため、加入している団体に利用しているかを確認してください。受付期間・予算は年度ごとに変わりますので、最新情報はJOHAS公式サイトでご確認ください。

関連する内容はストレスチェック後の「就業上の措置」と医師意見書ガイド|事業者が取るべき手順と記録の残し方で解説しています。

よくある質問

産業医のいない50人未満の会社でもストレスチェックを実施できますか?

はい、実施できます。ストレスチェックの「実施者」は産業医に限らず、医師・保健師、または厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師が担えます。外部委託サービス(クラウドSaaS・健診機関)を利用すれば、社内に資格保有者がいなくても適法に実施できます。

産業医がいない場合、高ストレス者への医師面接指導はどうすればよいですか?

地域産業保健センター(地産保)の登録医に依頼する方法が最も低コストです。50人未満の事業場向けに無料で面接指導を行ってもらえます。利用条件は最寄りの地域産業保健センターに確認してください。なお地産保はストレスチェック自体の実施者にはなれないため、実施(調査票の採点・高ストレス者判定)は別途外部委託が必要です。

50人未満の事業場がストレスチェックを外部委託する場合の費用目安は?

クラウド型SaaS・健診機関のどちらに委託する場合も、費用は委託先・プランによって異なります。地域産業保健センターを活用した医師面接指導は無料で受けられます(利用条件は最寄りのセンターに確認してください)。

50人未満の事業場へのストレスチェック義務化はいつからですか?

2025年5月14日公布の改正労働安全衛生法に基づき、政令により2028年4月1日施行が確定しています。施行後は1年以内ごとに1回の実施が必要です。初回の時期は、所轄の労働基準監督署や小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルで確認してください。

産業医がいない場合、ストレスチェックの実施者は誰に頼めばよいですか?

外部委託のクラウドSaaSサービス(医師・保健師が常駐している機関)に委託するのが最も手軽です。健診機関に定期健康診断と一緒に依頼することもできます。また、地域産業保健センターに相談すると、ストレスチェック実施に関するアドバイスを無料で受けられます(地産保はストレスチェックの実施者にはなれませんが、相談・情報提供は対応しています)。

社内の保健師や看護師を実施者にすることはできますか?

厚生労働大臣が指定する研修を修了した場合に限り、看護師・精神保健福祉士・公認心理師・歯科医師も実施者になれます。保健師は研修なしで実施者になれます。社内に保健師がいる場合は、追加コストなしで内製化できるため、長期的には費用削減につながります。